達磨(だるま)は、縁起物としてお正月などに厄除けとして飾るのが一般的です。今回は、達磨(だるま)の目入れの意味や、だるまを使っての願掛け方法などについてまとめてみました。
達磨(だるま)の目入れの意味
ひとつ目は、願掛けの始めと終わりという意味があります。
『阿吽(あうん)』という言葉を聞いたことがあるかと思います。
『阿吽』は密教の術語で、サンスクリット語で物事の始まりを意味する最初の音『阿(ア)』、物事の終わりを意味する最後の音『吽(ウン)』から【物事の始まりと終わり(宇宙の始まりと終わり)】を表す言葉とされています。
このことから、一部の地域ではだるまの目入れに黒マルを入れるかわりに、だるまの左目にインドの梵字である『阿(ア)』を書き入れ、願いが叶った後に右目に『吽(ウン)』を書き入れ、最後に感謝とともに供養をするという風習が残っています。
ふたつ目は、『開眼』=魂を入れるの意味です。
新たに作られた仏像などに魂を入れる『開眼』と同じ意味です。
だるまに目入れをすることで、開眼成就させるという意味もあります。
達磨(だるま)の目入れはこうして始まった
「だるまは願掛けに使うものだから、お客さんに目を入れてもらうのがいいのではないか?」という単純な理由から、白目や片目のだるまが登場し、目入れが始まりました。
もともと、江戸時代に売られていただるまは、最初から両目が入っていたんです。
江戸時代に感染症のひとつであり、不治の病として恐れられていた『天然痘(てんねんとう)』という病気が流行った時のお話です。
江戸時代の人々はこの病気を天然痘の別名「痘瘡(ほうそう)」と呼び「痘瘡神」によるものだと信じていたようで、魔除け、厄除けの『赤色』を痘瘡神が嫌うと考えられたことから、当時、縁起物として売られていただるまが、痘瘡神撃退の魔除けとしてよく売れたらしいのです。
ところが、目がキレイに描かれているだるまは売れ、雑に描かれているだるまが売れ残るという現象が起こりました。
その理由が、痘瘡になると視力を失う人が多くいたためです。
そのうち、だるまを買うお客さんの願い事が多様化したことから、売られているだるまの目に注文が入るようになり、そこから「だったらお客さんに目を入れてもらおう」・・・というのが始まりのきっかけです。
達磨(だるま)の目入れは左目から
だるまの目入れ方法と手順は次のとおり。
- 目入れの前に願掛けをする
- 願掛けをしながら、だるまの左目(向かって右目)に目入れをする
- 願いが叶った後に、だるまの右目(向かって左目)に目を入をする
- 最後にお焚き上げをして終了
目入れを左目からする理由は、右目を空けておくことで『右に出るものはいない』という力強い意味を込めたとの説が有力です。
ちなみに、目入れのときは次の2点に気を付けましょう。
- 目の外側が白目、内側が黒目
- 黒目を大きくしすぎない(外側の白目をきちんと残す)
黒目8割・白目2割くらいの目になるとちょうどいいバランスに見えます。
達磨(だるま)の目入れは筆ペン、マジック、サインペンでも可
だるまの目入れは、絶対に筆と墨じゃないといけないというわけではなく「黒マジック」「サインペン」「筆ペン」でも大丈夫です。
墨で描くと墨汁が垂れて、見た目が悪くなるという理由から、筆ペンを使う人が多いようです。
達磨(だるま)の目入れは大安・友引・先勝にするのが吉
縁起物ですから、やはり大安、友引、先勝といった縁起の良い日にだるまの目入れをしましょう。もちろん仏滅の日は避けます。
あと、だるまの目入れの時期としてもっとも多いのがお正月。
年始に家族の無病息災を祈願して左目に目入れをし、無事に過ごすことができたら一年後に感謝の気持ちを込めて右目に目入れをするのが慣例です。
何かを達成したいときもそうですね。
選挙当選後の目入れの瞬間なんかは、テレビでよく見る光景ですよね。
願いが叶わなかった場合はどうするの?
願いが叶わなかった場合は、年の終わりに右目に目入れをして、お焚き上げなどで供養します。そして、新しいだるまに願掛けをするといった流れになります。
願いが叶わなかったからといって、右目に目入れをしないままということではなく、願いが叶わなかった場合でも、右目に目入れをして完成させる=区切りをつけるようにしましょう。
達磨(だるま)について
達磨(だるま)は縁起物
だるまは、転んでも何度でも起き上がる『起き上がりこぼし』と同じように、縁起の良いものとされています。(だるまのルーツは中国の『不倒翁』=重りが入った張り子の人形)
『七転び八起き』の意味を込めて、無病息災、家内安全、合格祈願など、願掛けの縁起物として古来より利用されています。
達磨(だるま)のモデルは達磨大師
達磨(だるま)は、インド人仏教僧の達磨大師がモデルです。
江戸時代、起き上がりこぼしに達磨大師の顔を描いたことがきっかけとされています。
達磨(だるま)はなぜ赤い?
達磨大師が着用していた袈裟の色が『赤色』だったこともありますが、古来日本において『赤色』は魔除け、厄除けの効果があるとされていたことから、だるまの色付けは赤色となっています。
ただし昭和になってから『カラーだるま』といったカラフルなだるまが作られるようになり、それぞれ色の違いによって意味付けがされるようになりました。
例えば、金色のだるまは『金運・仕事運向上』、銀色のだるまは『安産祈願』、黒色のだるまは『商売繁盛』、白色のだるまは『合格祈願』といった感じです。
風水的な意味合いも込められているようですが、やはり日本古来から使われている赤色がメインなのは間違いないですね。
達磨(だるま)に手足がない理由
だるまに手足がない理由としては、次の2つの諸説があります。
- 達磨大師が過酷な座禅で両手足を失った姿を模したから
9年もの歳月をかけて岩壁に向かって座禅をし続けたことで手足が腐り、手足を失ったとの伝説があります。 - 達磨大師が着用していた赤い袈裟が両手足を隠していたから
達磨(だるま)はどこに飾ればいいのか?
昔は、神棚に向かって右側に飾るのがいいとされていましたが、今ではトイレやゴミ箱の近くといった不浄な場所以外であればいいようです。
ただし、次の点に注意して飾るようにしましょう。
- 目の上の高さに飾る
- 日が当たる明るい場所
- だるまの顔は南向き、もしくは東向き
- 仏壇や神棚と一緒には置かない
お役目を終えた達磨(だるま)の供養方法
願いが叶った場合も、願いが叶わなかった場合も、お役目を終えただるまは購入したお寺で『お焚き上げ供養』してあげてください。供養する時期は、新年を迎えるタイミングが多いようです。
また、地域の年中行事で『どんど焼き』の風習がある場合は、そこでお焚き上げ供養をしてもらうのもいいでしょう。
まれに神社で供養しても良いとの情報もありますが、だるまは仏教僧の達磨大師がモデルですから、できることならお寺での供養を優先するようにしましょう。
神社での供養は、近くに供養をしてくれるお寺がない、どんど焼きの風習がないという場合に限ります。
なお、供養後に、また新しいだるまを購入すれば、新たにご利益があるとも言われています。
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